紹介/創立趣意書

 2007年6月、関西大学が申請した文化交渉学教育研究拠点(ICIS)計画が文部科学省の「Global COE」プログラムに採択されました。10月のオープニングセレモニーで、人文学のノーベル賞というべきJ. クルーゲ賞の2006年度受賞者である余英時・プリンストン大学名誉教授が基調講演においてトインビーとハンティントンの文明論を論じ、ICISによる「文化交渉学」の構築、および文化交渉に関する研究の推進を目的とする学会の設立に対し、大変意義あるものだと励ましてくださいました。開所式に参列された各大学、研究機関の方々からもわたしたちの提案に対する賛意を賜りました。その後、わたしたちは北京・上海・台北・ソウルで、ICIS連絡所を順次開設し、また復旦大学における国際シンポジウム(2007年12月文史研究院、2008年12月歴史地理研究センター)等の機会で、文化交渉学会のあるべき姿について議論を交わし、コンセンサスを得るに至りました。
わたしたちが考えている「東アジア文化交渉学会」は、関連学会及び研究組織の長所をできるだけ多く取り込む、よりオープンでアクティブなものであり、従来型の学会と一線を画すものです。
本学会は、東アジアでの文化生成・接触・衝突・変容・融合等の諸現象を動態的に把握し、トータルな文化交渉のあり方を人文学の多様な方法を総合して複眼的な見地から解明するため、会員相互の研究上の連絡と交流を図ることを目的とする組織です。具体的には、

一. 研究の面において、グローバル的視野をもつ創造的な研究活動を目指し、研究の対象を「東アジアでの文化交渉」と設定していますが、それは「東アジアでの東西文化交渉」と「東アジア諸地域間の文化交渉」の両方を含むものであると考えております。そして、そのような文化交渉の実態を二国間・二地域間という「一対一」の視点というより、できるだけ多国間・多地域間という「多対多」の視点を生かして分析することです。
二. 上記の目的を達成するために、学会活動は、毎年、研究大会を開き、研究成果を交流すると共に、方法論の検討とリソースのシェアーを促進することに重点を置くべきだと考えております。また研究大会は、輪番制で異なる国・地域において開催し、現地の声と主張に耳を傾けることが望ましいでしょう。
三. 組織の面において、会員に掛ける負担を最小限にし、会則にあるように理事会、評議員会を中心に学会運営を行うと同時に、学会の日常業務を担当する事務局を向こう3年間関西大学に置くものとし、また学会誌を編纂する編集委員会も立ち上げる予定です。

 以上、わたしたちの趣旨にご賛同くださり、「東アジア文化交渉学会」の発起人になられることをお願い申し上げます。

関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)リーダー
陶徳民
2009年3月吉日